自宅で井戸を掘りたいと思う方は多いと思います。ただ、業者に頼むと高いし、自分で掘るにも機材がかかるのではと思い踏み切れない方が多いと思います。
ここでは、安価なホームセンターでも購入できる塩ビパイプなどの素材を用いて、自作器具で効率よくい小さな穴を地面にくりぬいて浅井戸を掘る方法を説明いたします。
水は出るのか?
そもそもあなたの土地に水脈があるのかが重要
そもそも井戸を掘ろうとする場所に水脈がなければ、あっても深い位置であれば自作井戸掘りでは井戸を掘りあてることは出来ません。なので、あてずっぽで掘るのではなくある程度確証をもって掘らないと徒労に終わってしまいます。
井戸を掘ろうと思う場所近くに井戸があるかが目安
手押しポンプで水が出る井戸、もしくは井戸跡が近所にあれば、水が出る可能性が高いです。また、近くに池がある(あった)場合や沼地や田んぼがある場合も可能性が高いです。住宅地で整備されてしまっている場所の場合は古地図などを参考にすればよいと思います。
時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」 http://ktgis.net/kjmapw/index.html
例えば、防災井戸マップなどがある地域であれば、家の近くに防災井戸があるのが確認できれば、水脈がある可能性が高いです。
塩ビパイプ井戸堀りに適している土質は?
今回紹介する自作器具で井戸を掘るのに適しているのは、赤土・土砂層・粘土層・砂礫(1㎝以下)が直下にある場所になります。
逆に、その土地が固い岩盤であったり、少し掘ると大きい石や砂利だらけの場合は、そもそも掘るのが難しくなります
地質調査はどうやる?
近くに家やマンションの工事現場があれば、掘削している土質をみれば掘りやすいのか推測が付きます。マンションの建築では数メートル程度基礎工事の時に掘る事があるので、その時の掘削土が、泥や粘土質ならこの掘り方でいけますが、砂利だらけでそれが2㎝くらいのものまで混じるような土質の様であればこの方法では難しいと思います。
なお、国土交通省では地盤情報を公開しておりますので、家の近辺でデータがあればそちらも参考になると思います。
「国土地盤情報検索サイト」(KuniJiban) http://www.kunijiban.pwri.go.jp
参考になるのは、地面を掘削した時の地層情報を図式した「柱状図」です。
さあ、井戸を掘りましょう!
GOサインの判断基準は?
自分で上記のように地質を調べて、地下水位がおそらく2~3m程度にあるであろう、そして直下の土質が粘土・砂・砂礫(最大1㎝程度)であるという見込みがあるのなら、GOサインだと思います。
私の場合は、半径800mの所に地盤柱状図情報がありましたので、少し遠いですがそれを参考にしました。
この柱状図の場合、 地下水位は2.4mにあるようです。4mには礫層があるので、ここに水脈があるのではと考えられます。実際にはより良い、そしてより水量が欲しいので次の8~8.5mまで掘ることにしました。そこに到達するまで、この柱状図によるとシルト(砂より細かく粘土より粗い)層だそうなので、私の自宅の場合はGOサインとしました。ちなみに浅井戸で汲み上げが出来る限界が9.8mになりますし、掘削のパイプの取り回しも難しくなるので、10mより深い場所まで掘ることは考えません。ともかく、自作井戸掘りはやってみないとわからないので、ほんとやるしかないです。
掘る場所はどうする?
自宅を掘るわけですからなんでも自由に、というわけにはいかないでしょう。規制や許可が要る場合もあります。(この辺りは「自分で井戸を掘った経緯」を参照)
これらをクリアし、地下に何が埋まっているのか理解したうえで、場所を選定する必要があります。なお、自宅庭に埋設されている水道管やガス管など自宅に付随する埋設物は自分の責任範疇になります。
自作器具をどうやって用意する?
自作器具は、主に塩ビパイプを使います。塩ビパイプの接手、接着剤、パイプカッター(のこぎりでも可)、ネジ(接手の抜け予防用)、先端に付けるオーガードリル等も必要になってきます。
特に塩ビパイプはしょっちゅう買い足すことになると思うので、近くで安価に手に入る大型ホームセンターを見つけておくとよいでしょう。
自作器具を作ろう!
この工法では、先端に各種器具(オーガー、刃物、掬い取りのヘッド等)を付けて、それを回転させる事で穴を掘っていきます。深くなれば塩ビパイプをどんどん継ぎ足していく事になり、最終的には10メーター近くまで掘り進めることもあります。
掘っては引き出し、また入れては掘る。そして塩ビパイプに力をかけて回転させる、といったことを何度も繰り返して掘り進めていきます。
そこで、塩ビパイプは、強度と取り回しやすさのバランスを考えて、VP25管を用いて回転させて掘るのが良いと思います。VP25管は、長くつないでも適度にしなるので、掘るたびに継ぎ足していく事が出来ますし、電動工具での回転にもかなりの強度で耐えてくれます。
両端にオス・メスのバルブソケットを付けた塩ビパイプを例えば0.5m、1m、2mなどの長さで複数揃えておけば、深くなるごとに継ぎ足すことができます。
そして塩ビパイプの先端には、掘削中の土質により取り付ける刃物やオーガー器具をバルブソケットにより脱着できるようにしておきます。私の場合は、先端部分はVP25管バルブソケットのオス(3/4インチ)に統一して取り換えられるようにしました。
まずはシャベルで掘削開始!
まずはシャベルで深さ1m弱程で、径はなるべく細めの縦穴を掘ってみれば、水道管やガス管等埋設物の有無はわかるはずですので、場所を決めたら深く掘り始める前にシャベルで掘ってみましょう。通常家庭の水道管が1mより深い位置に埋まっていることはないと思います。
1m程度縦穴を掘り終えたら、1.5m程度の鞘管になるVU75塩ビパイプを差し込み、周りを埋め戻します。そして、それ以降はVU75管の内部のみを掘り進めることになります。
地質に応じた臨機応変な対応、創意工夫が必要です!
さあ、ここからVU75管の内部の掘削を、VP25の塩ビパイプの先端に器具をつけて、それを回転させて掘り進めていく事になります。
掘り進めるごとに、土の質が変わってくる場合がありますので、都度臨機応変に先端を変えていくことになると思います。
写真の器具は、上が土の掘削用、下が砂の掻き出し用の先端部分です。
表層に一般的によくある粘り気がある土の場合は、塩ビパイプで作ったドリルでくり抜いては引き上げてくっついた土を落とすことを繰り返すことで掘っていく事が出来ます。
粘土層の場合は、オーガードリルで掘り進めるのが効果的ですので、これを用意すると良いでしょう。
私はΦ60㎜の取っ手付きのものをホームセンターで購入して、先端のスクリュー部分のみを金のこぎりで切断して、塩ビパイプに差し込んでタッピングネジで固定しました。
なお、ドリルの部分だけなら、楽天で購入できます。
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砂地の場合は、先端にスコップを付け、その上に底を切り取ったペットボトルを逆さに取り付け、砂を突いてペットボトルで掬いあげる作業をを繰り返すことになります。写真のようなヘッドが効果的だと思います。なお、掘削場所が地下水面に至っていない場合は、外部から水を入れてやり、砂を水中で舞わせてる必要があります。
どうやって掘削ドリルを回す?
オーガードリルや刃を先端に取り付けた場合は、器具を回転させて掘り進める必要があります。私の場合は中古のアングルインパクトを持っていたので、塩ビパイプの末端を六角ボルトに変え、アングルインパクトの先端に六角ボルトにつながるソケットを取り付けて接続し、塩ビパイプを回転させて掘り進めました。
なお、同様のアングルインパクトは楽天でも販売されています。ちょっと高いですが、車や家の修理などのDIYにも使えるので一つ持ってては如何でしょうか?
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また手で回したい場合は、先ほどオーガードリルを分断した時の取っ手側を塩ビパイプにつなげば、回転ハンドルにすることが出来ます。
地下水が出た!さてどうする?
掘り進めていくと、意外に簡単に地下水面まで達する場合もあると思います。ただし自噴(自分から湧き出るような井戸)するようなケースでない限り、水を吸い上げるとどんどん地下水位が下がってきます。時間が経つと元の水位に戻ります。
ですので、なるべく深く掘って水が井戸の穴の内部に十分溜まるように掘り下げていく必要があると思います。
私の場合は2.4mで地下水面が出てきましたが、水量や水質を追い求めて8mちかくまで掘ることになりました。それにより、電動ポンプで連続的に汲み上げても井戸水が枯れる事が無くなりました。
井戸を掘ったら・・・
どうやって汲み上げる?
井戸が掘れたら、次は汲み上げパイプやポンプを設置することになると思います。折角作った井戸に泥水などが流入しない様、VP75塩ビ管の鞘管をなるべく深くまで打ち込みます。そして井戸の周りはコンクリート桝などで固めておくとよいでしょう。
井戸の中に沈める給水管の先端には、フート弁(逆止弁)を付け、折角地上まで引っ張り上げた井戸水が下に落ちないようにした方が良いでしょう。
井戸枠の上に手押しポンプを設置したり、配管を引いて電動ポンプと接続すれば、井戸の完成となります。
井戸の穴には雨水や葉っぱ・ごみなどが入り込まないようにカバーで覆った方が良いでしょう。
水質は?使えるの?
折角出てきた井戸水、恐らく年中同じ温度で夏は冷たく冬は暖かく、庭の水まきに、洗車に、冬の融雪に、災害用にとさまざまな用途が期待されます。
ただし、井戸水に有害物質やカナケ分が含まれていないか、とくに人に触れるような用途で井戸水を使用する場合は安全性を事前に調査しておいた方が良いと思います。民間の業者で1~2万円程度で水質検査を行っている機関もありますし、私の場合は市の防災井戸登録をすることを前提で無料で水質検査を行ってもらいました。
結果、我が家の井戸ではカナケ分(鉄イオン)が多いものの、大腸菌や一般雑菌、ベンゼンなどの有害物質は検出されず、安全に使用できる事の確認が取れました。